葬儀は故人とお別れを行うための大切な儀式ですが、その費用が高額になることも少なくありません。突然の出費に備えることは難しく、金銭面で負担に感じる方も多いです。そこで本記事では、リーズナブルな葬儀の選択肢や葬儀費用を抑える方法、葬儀費用を払えないときの対処法などについて詳しく解説します。
目次
葬儀にかかる平均費用
日本最大級の葬儀依頼サイトを運営する株式会社鎌倉新書が行った「お葬式に関する全国調査(2024年)」によると、葬儀にかかる平均費用は約118.5万円であることがわかっています。この価格は葬儀社に支払う金額だけでなく、僧侶へ渡すお布施や火葬費用なども含めた葬儀全体にかかる金額を示しています。
葬儀にかかるお金の内訳を詳しく見てみると大きく3つに分けられ、葬儀一式費用、飲食接待費、宗教者への謝礼に分類できます。葬儀一式費用には、式場使用料、棺や納棺用品費用、霊柩車や寝台車の手配料金が含まれます。
飲食接待費は、通夜振る舞いや精進落しなどの会食費用や、香典返しなどの費用です。宗教者への謝礼は、読経料や戒名料などを包んだお布施、御車代、御膳料などが該当します。もちろんこれら葬儀にかかる費用は全額自己負担しなければならないわけではなく、相続税からの控除や参列者からの香典を利用できます。しかし、葬儀費用は突然必要になり、またある程度の自己資金を用意しなければなりません。そのため葬儀に関する費用負担を減らすためには式にかかるお金を抑えることが有効です。
葬儀費用が安い式
葬儀というと親族や知人友人を集めて行う一般葬がイメージされますが、それ以外にもさまざまな種類の式があります。どのような葬儀を選べば費用が安くなり、いくらくらいかかるのか、以下でみていきましょう。
1日葬
あまり費用がかからない葬儀には、1日葬というものがあります。1日葬とは、通夜を省略した葬儀のことです。親族や友人が葬儀の前日に集まって、焼香や通夜振る舞いを行うことはしません。1日葬では、僧侶による読経や焼香を行う葬儀、祈祷や献花などを行う告別式、遺体を棺桶に納めて焼却することで弔う火葬のみを行います。1日葬でかかる費用は、約45万円です。直葬よりは高いですが家族葬よりは安く、葬儀の中では中価格帯のプランといえます。名前のとおり1日で葬儀が終わるため、一般葬などと比べるとかなり安価です。場合によっては、半額にまで費用が抑えられることもあります。また、1日葬のメリットは安いだけではありません。通夜を行わないため弔問客の対応や通夜振る舞いの手配などをする必要がなく、身体的な負担もかなり軽減されます。1日葬は、お金や時間を抑えつつ丁寧な葬儀がしたい方におすすめです。
家族葬
あまり費用をかけずに葬儀を行いたい場合は、家族葬もよく検討されます。家族葬とは、家族や親戚など限られた親族のみを呼んで行う葬儀のことです。最近では親族に加えて、親しい友人などを呼ぶ場合もあります。家族葬は、参列者が少ない小規模な一般葬のようなものです。一般葬の参列者が少なくても50名以上なのに対して、家族葬の参列者は多くて30名ほどです。式の内容は一般葬と変わらず、通夜、葬儀、告別式、火葬のすべてを行います。家族葬にかかる費用は、約110万円です。1日葬や直葬に比べると高いですが、それでも一般葬と比べると50万円ほど費用を抑えられます。一般葬よりも招く人数が少ないため、通夜振る舞いや精進落としなどの会食代が浮いたり、会場代としてかかる費用を少なくできたりします。
直葬(火葬式)
もっとも費用がかからない葬儀として挙げられるのが、直葬です。直葬とは通夜や告別式などは行わずに、納棺や出棺後にすぐに火葬を行う葬儀です。希望する場合は僧侶による読経をしてもらい、焼香をした後に火葬に入ります。直葬にかかる費用の全国平均は、約35万円です。これはさまざまな種類やプランがある葬儀の中で、もっとも安い価格です。通夜や告別式を行わないため、葬儀社に支払う代金が最小限で済みます。また、参列者として招く人数も少ないため、会場代や接待費用もあまりかかりません。
お経を上げなければ僧侶へのお布施を支払う必要もないため、さらに葬儀代を安くできます。ただし、僧侶による読経がない場合、宗派によっては一族のお墓に納骨できなかったり、事前の相談が必要になったりすることがあります。直葬は、費用や手間が抑えられて心身への負担も少ない葬儀方法ですが、選ぶときは注意点もよく調べてトラブルが起こらないように気をつけましょう。
葬儀を安くする5つの方法
葬儀のための出費は突然発生し、安く抑えるためにはコツを知っておく必要があります。葬儀の規模自体を小さくすることや細々としたプランの見直し、安い葬儀場の探し方など、葬儀を安くする方法を5つ紹介します。
1.葬儀の規模を小さくする
葬儀にかかる価格を安くするには、葬儀の規模を小さくする方法があります。一般的に葬儀の形式をグレードダウンさせたり参列者の人数を減らしたりすれば、その分費用は抑えられます。葬儀の種類を費用が少ない順に並べると、直葬がもっとも安く約35万円です。1日葬が約45万円、家族葬になると料金が高くなり約110万円です。もっとも高いのが一般葬で、130万円からそれ以上かかります。少し前まで葬儀は親族や友人を招いて盛大に行うもの、という考えが主流でした。しかし、近年では核家族化や近所付き合いの希薄化、葬儀をプライベートなものと捉えられる価値観の広がりにより、あまり規模が大きくない葬儀の人気が高まっています。
また、家族に負担をかけたくないため、自身の葬儀をコンパクトなものにしたいと望む方も増えています。葬儀の規模を決めるときは、当事者や親族の希望をすり合わせながら選ぶと納得のいく式が行えます。
2.葬儀プランの見直し
葬儀の規模を縮小することと並行してプランの内容も見直せば、式にかかる出費をさらに抑えられます。葬儀にかかる費用の内訳とその割合を見てみると、葬儀自体にかかる費用が6割、参列者の接待や返礼品にかかる費用が2割、僧侶へ渡すお布施なども2割となっています。これら葬儀にかかる費用を抑えるには、それぞれの項目のプラン内容を細かく見直すことが必要です。まず、葬儀そのものを安くするためには直葬や市民葬など安い葬儀プランをベースにしつつ、棺や祭壇やお花のグレードを抑えることが有効です。できるだけ早く葬儀を開けば、エンバーミングなどの料金も節約できます。また、参列者への接待や僧侶へのお布施には決まったルールがないため、失礼のない範囲でかける費用を減らせます。料理のランクを下げる、返礼品をハンカチなどにする、心付けを最低限にするなどを行えば、少しずつ葬儀費用を抑えられます。
3.安い式場を探す
葬儀にあまりお金をかけたくないのなら、式場の使用料自体が安い場所を探すのも方法の一つです。葬儀にかかる費用は、プラン内容や参列者として集める人数により異なります。一般葬向けか、それ以外かで必要な式場の大きさが変わるため、料金も変化します。格安の式場を探すなら、生前から複数の葬儀社を比較して見積もりをもらっておくことが重要です。生前から考えておけば焦って決める必要もないため、さまざまな要素を慎重に比較でき、失敗せずに安い式場が探せます。式場の比較をする際は料金が安いことはもちろん大切ですが、式場へのアクセス、葬儀にかかる時間、火葬場との距離なども考慮に入れましょう。もし遠方から来る参列者のために交通費や宿泊代を渡す場合は、立地が悪かったり式に時間がかかったりとその分用意すべき費用がかさみます。また、火葬場から遠いと遺体の搬送費用が高くなるため、先に火葬場を決めてから葬儀場を選びましょう。
4.市民葬・区民葬を利用する
葬儀を執り行う際に市民葬や区民葬などのプランを利用すれば、葬儀費用を安くできます。市民葬や区民葬は、市や区などの自治体と葬儀社が連携して葬儀を行ってくれる公営の葬儀サービスです。葬儀社や火葬場や霊柩車の協力により、相場よりも安い価格で葬儀が執り行えます。市民葬や区民葬の利用条件に所得額の制限はなく、亡くなった方かその葬儀の喪主がその自治体に住んでいれば利用できます。葬儀のプランや内容も一般的な式と変わらずに、通夜や葬儀や火葬をすべて行ってもらえます。ただし、市民葬や区民葬は、どうしても必要最低限の質素な式になってしまいます。自治体によっては参列者への接待や返礼品を渡すことを禁止しており、オプションとしてつけると通常の葬儀社での葬儀と同じくらいの費用がかかる場合もあります。市民葬や区民葬は、親族のみの小さな葬儀を行いたいときに選ぶのがおすすめです。
5.保険に加入する
葬儀費用を安く抑えるためにできる5つめの方法は、葬儀保険に加入することです。葬儀保険とは、自分の葬費用や死後の身辺整理にかかるお金をまかなうための保険です。生命保険を取り扱っている会社などが葬儀保険のプランも用意しており、さまざまな掛け金や条件から自分に合った保険が選べます。葬儀保険についてさらに詳しく説明すると、月500円程度からでも積み立てられるため保険料が割安です。また、高齢の方でも加入や利用がしやすく、最長で申し込みは満89歳までです。更新は、満99歳まで可能な商品もあります。さらに、保険金の支払いも早く、受取人の自由な用途で葬儀費用以外にも使えます。一方、葬儀保険はメリットだけではなくデメリットもあります。中でももっとも大きな点は、葬儀保険は基本的に掛け捨てであるため、解約するとお金が戻ってこないことです。また、加入期間が長いと支払った元本よりも受け取り額が少なくなり、元本割れする可能性もあります。よって葬儀保険に加入する場合は、掛け金や加入するタイミングなどをよく考えてから申し込みましょう。
葬儀費用を安くしても払えないときは?
4つの対処法を紹介
葬儀の規模やプランを工夫しても費用の支払いに不安を感じる場合は、他の方法でお金を工面しましょう。以下では、葬儀費用を用意する方法を4つ紹介します。
1.葬儀ローンを使用する
葬儀費用を安くしても払えないときは、葬儀ローンを利用してみましょう。葬儀ローンとは、葬儀費用の支払いの際に利用できる金融サービスです。葬儀費用が自己資金で用意できない場合に金融機関などからお金を借りて式費用を支払い、借りた分のお金はそのあとに分割して返済できる仕組みです。
葬儀ローンは通常のローンと同じように、手数料がかかったり審査に通らないと利用できなかったりします。しかし、予算に縛られずに希望する葬儀をできることや、出費の波を緩やかにできるなどのメリットも大きいです。
2.遺産相続で払う
お葬式にかかる費用は、相続した財産からも支払えます。葬儀費用の支払人が故人の遺産相続人である場合、相続した財産から葬儀費用を支払うことが可能です。また、相続財産から葬儀費用を支払えば控除を受けられ、葬儀費用を差し引いて相続税の計算ができるため、節税対策にもつながります。ただし、葬儀代のすべてが相続税から差し引けるわけではないため注意が必要です。相続税の控除を受けられる項目は、お通夜などを含めた通常葬儀に伴う費用や、接待代やお布施などです。反対に相続税の控除を受けられない項目としては、香典返し、墓石の購入費用、法事の費用などがあります。
3.お香典で支払う
葬儀の歳に参列者からもらうお香典も、式の費用に充てることも可能です。故人と関係が近しいほど包む金額を多くするのが一般的で、親戚であれば1万円から3万円、友人や職場関係の方なら3,000円から1万円ほど渡します。香典をもらった場合は、香典返しとして半返しをするのがマナーです。そのため、全額を葬儀費用として使うことは難しいですが、単純計算でもらった香典の半額ほどなら利用できます。突然出費が必要になる葬儀では、お香典はあると嬉しい心遣いです。
4.保険金を申請する
葬儀費用を払えないときの4つめの対処法は、保険金を利用することです。格保険会社が販売している葬儀保険を利用すれば、突然の出費にも対応できます。月数百円から積み立てられて支払いも早いため、負担なく葬儀費用の用意が可能です。また、葬儀に関する保険は国から受け取れるものもあります。健康保険や共済組合、国民健康保険など職業によって利用できる保険に違いはありますが、いずれも葬儀後にその費用の一部を負担してもらえます。
まとめ
葬儀費用を抑えるためには、葬儀の規模を小さくしたりプラン内容を見直したりすることが有効です。安い葬儀には直葬や1日葬や家族葬などがあり、また市民葬などの公的サービスも割安です。複数の見積もりを比較検討すれば、より安いところが見つかります。それでも金銭面での負担が大きく感じる場合は、保険などを利用して費用をまかないましょう。
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