人類は、約6万年も前から葬儀を行ってきたと考えられています。古代の人々は、死を恐
怖と感じたり、死者の復活を祈ったり、さまざまな形で葬儀を行ってきました。そして葬
儀は、時代に合わせる形で変化を続け、現在へと受け継がれています。この記事では、葬
儀にはどのような種類があり、そこにはどんな考え方があるのかなどについてご説明して
いきます。
日本の葬儀
現在、日本で行われている一般的な葬儀は「お通夜」「葬儀・告別式」という形式をとります。お通夜は「殯(もがり)」という儀式を基礎とするもので、葬儀のいわば前夜祭的なものです。かつては夜が明けるまで、ろうそくや線香の火を絶やさずに故人とともに過ごしていました。しかし、近年は火災の危険性などもあるため、このような形でお通夜が行われることは少なくなりました。特に大都市周辺では、式場にて夜のみ行われる半通夜の形態が定着しています。
翌日に葬儀・告別式を行ったあと、出棺、火葬となります。出棺の際には、喪主のあいさ
つが行われ、参列者は故人を乗せた車が出るのを見送るのが一般的です。告別式は通常、
友引を避けて行われます。「友を死に引く」ことを避けるという考え方がそこにはあるよ
うですが、そもそも仏教と六曜に関連性は何もないため、これは迷信と考えるのが妥当で
す。友引が休業日に設定されている火葬場は多いのですが、現在は、友引に営業する火葬
場も増加しています。
葬儀とは、故人が成仏するよう、遺族や近親者が参列して祈願する儀式のことです。一方
、告別式は、遺族や近親者以外にも、友人や知人などが参列して行われるお別れの場です
。葬儀は宗教色の濃い儀式ですが、基本的に告別式には儀式的な要素はありません。ただ
、現在はご説明したように、同じ日程で行われるため、葬儀と告別式をまとめて「お葬式
」としているのです。
日本では仏式の葬儀が主体ですが、もちろん神式、キリスト教式など、ほかの宗教の葬儀
も行われています。いずれの場合でも、故人とのお別れの場であることに違いはありませ
ん。
一般的な仏式葬儀における「考え方」
仏式葬儀でも宗派によって葬儀における考え方は異なります。しかし、ほとんどの宗派で
、死を悼み、極楽浄土に故人を送ることを目的として行われます。葬儀は宗教的な儀式で
すから、この場に参列する人にとっては、身近な人の死を受け入れ、前を向いて進むため
に心を落ち着かせる機会となります。そしてあわせて、身近な人の死から、生について考
える機会でもあるのです。
葬儀には、人を集めるという意味もあります。ひとりの人間が亡くなることで親族が集ま
ることは、親族間の絆を確認する機会だといってよいでしょう。法事にも同様のことがい
えます。
火葬の意味
火葬にも意味があります。火葬は、遺体の処理だけではなく、故人が事実として社会からいなくなったことを証明するために行われます。もちろん、葬儀は地域的な違いが大きいので、すべての地域において、同じ考え方で行われるわけではありませんが、火葬については、ほぼ同じだと考えてよいでしょう。
お通夜と葬儀が行われる理由
日本の一般的な葬儀は、ご紹介したように「お通夜」「葬儀・告別式」という形で行われます。これらを分けて行うことには、どのような意味があるのでしょうか?
お通夜は、すでにご紹介したように、本来は遺族や近親者だけで営まれる儀式です。古く
は、故人が生き返ることを祈願して行われたともいわれています。だからこそ、遺体のそ
ばに寄り添い、夜を明かしたのかもしれません。お通夜は、遺族や近親者が故人について
思い、心を慰める場であったのです。
一方、葬儀は宗教的な意味を持つ儀式であり、現在は告別式とあわせて行われるため、友
人・知人など、数多くの人々が故人を送り出す機会となっています。
確かに現在の「お通夜」「葬儀・告別式」という形態は、それぞれが元々持っていた意味
とは異なっているのが実情です。「お通夜」も「葬儀・告別式」も、近年では簡素化され
る傾向にありますが、これも時代に合わせた変化だといってよいでしょう。
一般葬が選ばれてきた理由
「お通夜」「葬儀・告別式」という形で、2日間にわたり行われる一般的な葬儀。一般層
が選ばれてきたことには理由があります。特に都市部での葬儀の場合、遺族・親族以外の
人がお通夜の弔問に訪れることも増えています。もちろん、お通夜の翌日に行われる「葬
儀・告別式」に参列することが基本ですが、特に近い間柄の場合は、お通夜に弔問するこ
とも多いでしょう。会社関係者など、故人の交友関係が幅広い場合も、お別れの機会を作
るという意味では一般葬が向いています。簡素な葬儀が選ばれるようになってきた昨今で
はありますが、しきたりに則って葬儀を行いたいという人も一定数いらっしゃるため、現
在も最も一般的な葬儀の形になっています。
お通夜も告別式もない葬儀とは
現在の一般的な葬儀の形式は、ご紹介したようなものです。最近、よく行われるようにな
ってきた家族葬も、基本的には、この形式を踏襲しています。しかし、この流れとはまっ
たく異なり、お通夜も告別式も行わない葬儀もあります。これが直葬です。
直葬(火葬式)では、遺体を安置したあと火葬という流れになります。遺体は、法律によ
り死から24時間は安置する必要があるので、すぐに火葬というわけにはいきません。通常
は、葬儀社、もしくは自宅に安置してから火葬場に向かうことになります。直葬に参列す
るのは、遺族など、関係の深い人のみです。直葬の場合でも、僧侶に来てもらい、読経を
お願いするのが一般的ですが、火葬だけを行う場合もあります。直葬は、身寄りや親族の
少ない方が亡くなった場合によくとられる形式の葬儀です。しかし、近年では経済的な面
から、この葬儀を選ぶ人も増えています。このような理由で直葬を選ぶ場合は、まずは親
族と話し合うことが重要です。親族の理解を得てからでないと、トラブルに発展する可能
性があります。
密葬について
テレビなどからよく聞こえてくる「密葬」という言葉。よく聞くわりには、あまりはっき
りとその意味については知らないという人が多いようです。テレビでよく使われる言葉で
あることからもわかるとおり、「密葬」は、芸能人や政治家など、有名な人が亡くなった
際によく行われます。遺族や近親者以外はほとんど誰も参列しない、小規模な葬儀です。
多くの場合、密葬のあとには「本葬」や「お別れ会」が催されます。やはり、有名人の場
合は交友関係も幅広い場合がありますので、そのような人々とのお別れの場を作ることが
多いようです。密葬のあとに本葬が行われるケースでは、比較的自由なスタイルで葬儀が
行われることもあります。芸能人のお別れ会では、一般ファンが献花できる場合もありま
すが、密葬後の本葬では、そのようなスタイルをとることも可能です。
家族葬とは
近年、非常に増えているのが、この家族葬です。家族葬は、その名称からもわかるとおり、家族や近親者など、近い人たちだけで執り行う葬儀のことを指しますが、厳密に定義が決まっているわけではありません。通常は、多くても30人程度の参列者で行われます。比較的自由度の高い葬儀になりますが、葬儀の流れは基本的に一般葬に準じます。
家族葬は、一般葬のように宗教的な儀式ではなく、故人や遺族の意向に沿った葬儀が行えます。参列する人も近い関係の人ばかりなので、リラックスして故人を送れることから、家族葬を選ぶ人が増えているようです。
しかし、家族葬にも難しい部分はあります。それは参列者をどのような基準で決めるのか
ということです。故人と親しかった人の中には、葬儀に参列できなかったことを無念に思
う人もいます。葬儀は家族葬で行ったことをあとから耳にして不満を感じる人もいます。
特に故人が幅広い交友関係を持っていた場合は、このようなトラブルが発生しがちなので
、参列しない人には、家族葬は故人の希望により行うということを、いかにうまく伝える
かが重要になるでしょう。大阪・吹田市周辺で家族葬をお考えの方は「みかづき」までご
相談ください。
一日葬とは
一日葬とは、文字どおり、葬儀を1日ですべて行う葬儀のことです。ワンデーセレモニー
と呼ぶこともあります。一般葬ではお通夜が行われますが、これを省略したものが一日葬
です。一日葬は、家族葬や密葬のように、ごく近い間柄の人たちだけで行われます。
一日葬では、「葬儀・告別式」から「火葬」という流れになります。直葬同様、1日で葬
儀の日程を終えるとはいえ、一日葬ではしっかりと儀式を執り行います。一日葬は、規模
的には小規模ですが、親類だけではなく、もう少し多くの人たちにも参列してもらえる葬
儀です。そういう意味では家族葬よりも規模はやや大きいといえますが、1日だけなので
費用的な負担が少なくなるというメリットを享受できます。
自由葬とは
家族葬や一日葬が選ばれるようになり、葬儀の形は多様化しています。そんな中、これま
で強く宗教に結びついていた葬儀を、自らの意志において、宗教とは離れて、自由な形で
行いたいと考える人も増えています。それが自由葬です。故人の考え方が強く反映された
葬儀は、これまでの葬儀とはまったく異なる、まさに自由にデザインできる葬儀です。音
楽葬は、有名ミュージシャンの葬儀で行われたこともあり、一般の人にも取り入れられて
います。また、イベントのような形式で司会者が進行を行うような自由葬もあります。た
だ、このような新しい考え方で葬儀を行うことを受け入れられないという人がいることも
事実です。地域的に保守的なカラーが強く、難しい場合もあるでしょう。いずれにしても
、自由葬を行うのであれば、親族との話し合いは欠かせません。
自由葬は、宗教とはまったく離れた葬儀なので、その後の四十九日などの風習についても
自由に考えればよいという利点があります。
葬儀に関するまぎらわしい言葉について
葬儀と告別式の違いについては、先にかんたんに触れました。葬儀は宗教的な儀式であり
、告別式は儀式的な要素のないお別れの場です。
葬儀と告別式の違い
もう少しこれを詳しく説明すると、「葬儀」の部分では、仏式の場合は僧侶がお経を読み
、キリスト教式の場合は牧師が聖書を読み上げます。「告別式」の部分では、宗教的な要素
がない喪主のあいさつ、弔電の読み上げなどが行われます。葬儀と告別式については、特
にまとめて語られることが多いため、まぎらわしいと感じる人が多いのですが、この2つ
の言葉が表す意味は明らかに異なります。
葬式の意味とは
それでは、「葬式」という言葉はどんな意味を持つのでしょうか?これもなんとなく意味がはっきりしない言葉だと思いませんか?先ほど、葬儀は宗教的な儀式だと説明しましたが、葬式という場合は、宗教的な儀式も、まったく宗教とは関係ないことも、どちらも含まれます。すなわち、葬儀も告別式も葬式だといえます。よけいにまぎらわしく感じるか
もしれませんが、意味を誤って理解してしまうと、たとえば訃報を受けたときの対応方
法も誤ってしまうことがあるので、注意が必要です。
訃報を受けた際の対応を誤らないために
このように、葬儀に関する言葉はまぎらわしいので、対応に迷うこともありますが、注目
すべきポイントを押さえておけば、対応を誤ることはありません。
直葬で行うとの連絡を受けた
遺族から葬儀を「直葬で行う」との連絡を受けた場合は、遺族は一般参列については基本
的に辞退すると考えていると思ってよいでしょう。お世話になったのでどうしても…とい
う場合は、遺族に相談するしかありません。
訃報の連絡を受けたが日程が書かれていない
訃報のお知らせ状に、日程が何も書かれていない場合は、基本的にお通夜についても葬儀
・告別式についても、喪主側が一般参列は辞退する意思を持っていると考えて間違いあり
ません。
反対に、お通夜や葬儀・告別式の日程が書かれている場合は、弔問、参列してもよいとい
うことになります。
家族葬で行うとの連絡を受けた
家族葬で行うとの連絡を受けた場合は、遺族と近い親戚のみで葬儀を行うと理解してよい
でしょう。つまり、お通夜や葬儀・告別式の日程が書かれていない限り、どちらにも出る
ことはできないということになります。とても近い関係にあった友人であれば、遺族から
参列をお願いされる可能性があります。
地域的な独特の習慣に注意
葬儀は、地域的に習慣の違いが大きく、戸惑うこともしばしばです。そのため、あまり知
らない地域の葬儀に参列する場合は、事前になるべくその地域の習慣などについてリサー
チしておくことをおすすめします。地域によっては、火葬を葬儀の前に行うこともありま
す。
お別れ会とは
訃報の連絡を受けた際、お知らせ状に「お別れ会」と書かれていることがあります。お別れ会は、ほとんどの場合、すでに葬儀や火葬が終わったあとに行われます。そのため、宗教的なイベントではなく、純粋に故人と関わりのあった人たちが、故人を偲ぶ機会だと考えるとよいでしょう。
喪主の立場になったら
最後に、喪主の立場になった際、葬儀をどのように執り行うのか、その考え方についてご
説明しておきます。
ご紹介したように、葬儀にはさまざまな形があります。どんな葬儀にするのか、それを決
める重要な要素は「お通夜」「葬儀・告別式」の有無、そして「火葬」の時期です。
お通夜は基本的に夕方から行います。都市部のお通夜では、夕方から行われることもあり
、一般会葬者も数多く弔問に訪れます。そのため、お通夜をやらないことにすると、一般
会葬者の数は減ってしまうでしょう。もちろん、本来の意味での静かなお通夜を選択する
ことにも大きな意味があります。
葬儀・告別式についても「やらない」という選択肢はありえます。しかし、この選択肢を
選べるのは、親族や近い関係の友人とのお別れが済んでいる場合に限られるでしょう。
火葬の時期についても選択肢はあります。普通は葬儀のあとに火葬しますが、遺族と近い
親類だけで葬儀を行ったあとに火葬して、その後にお別れ会というパターンもよくありま
す。火葬を行ったあとに葬儀を行う「骨葬」も行われていますが、これについては地域性
が強いようです。
まとめ
ご紹介してきたように、葬儀にはさまざまな形があります。これまで行われてきた一般葬
は現在も主流ですが、葬儀は簡略化の方向にあることは間違いありません。故人を送り出
すに当たり、どのような形で葬儀を行うことが最もふさわしいのか、しっかり考えること
はとても重要です。
故人の考え方、経済的なことなど、葬儀を行ううえで考慮すべきことはたくさんあります
。親類も交えてどのような形で葬儀を行うのか、故人の交友関係についてもできるだけ調
査して、誰も不満を持たないような葬儀にできれば理想的です。
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